殺戮都市

それなのに、俺の身体は俺の物じゃないように勝手に動く。


「な、何をしている!正気か、坊主!」


床に倒れて身動きが取れなくなった恵梨香さんを一瞥して、次は中川に視線を向けた。


「じゃあ、あんたが満たしてくれるの?私の渇きを!」


ターゲットが恵梨香さんから中川に変わった。


ダメだダメだ!


「辞めろ!仲間にまで手を出すな!何がしたいんだよ!あんたは!!」


俺は必死に叫んだ。


この声が狩野に届いているかどうかも分からない。


ただ戦いを楽しみたいだけの狩野。


松田を倒せた事は大きかったけど、その代償がこれだとすると、俺はとんでもないやつに身を委ねてしまったのではないかと、今になってやっと後悔し始めていた。


日本刀を振り回し、中川に向かってゆっくりと歩き始める狩野。


いくら止めようと頑張っても、その足は止まらない。










……いや、微かにだけど脚が止まった。









ほんの一瞬……中川は気付かないであろうくらい短い時間。


身体を完全に狩野に乗っ取られているわけじゃない。


まだ、俺の意思が入る余地が、微かに残っているのだと理解した。