殺戮都市

俺じゃあ、松田には勝てない。


でも狩野なら互角以上に戦えている。


この事実が、俺の存在価値を否定しているようでやりきれない。


もっと強くならなければ、バベルの塔に挑むだなんて無理な話だと。


突き付けられた事実を、狩野に動かされる俺の中で見ていた。


「少しはマシな顔になったじゃない。そうそう、戦いは死と隣り合わせじゃないと燃えないでしょ?」


優しく笑い掛けた狩野に騙された気分だ。


こんな状況で戦いを楽しんでいるなんて、まるで狂人。


この街では狂戦士とでも言うべきか。


殺し合いを楽しむからこそ、狩野はバベルの塔を目指さなかったのだろう。


葉山は、前の持ち主と戦った事があると言っていた。


それはこの狩野の事で、キングに興味はなかったのだろう。


純粋に戦いを楽しんでいるというのが分かるから。


「う、うう……」


後ろから、恵梨香さんの唸り声が聞こえた。


ここで狩野が負ければ、恵梨香さんも中川も殺されるんだ。


もしかすると、二度と復活出来ないように端末を破壊されてしまうかもしれない。


そうさせない為には、今ここで松田を殺すしかないのに。


運命を他人任せにしなければならない状況がもどかしかった。