殺戮都市

元恋人……とは言え、そんな素振りを松田は見せなかった。


ただ挨拶をしただけで、恵梨香さんを取り戻そうとか、一緒にいる俺達に対して怒るとか、そう言った態度は一切。


「大丈夫だ。私の事よりも達也に集中しろ。死んでしまっては、どうする事も出来ないんだからな」


中川の後を追うように、俺の手を引いて歩き出す。


体育館……狭い室内なら、ブンブンと鞭を振り回す事も出来ないだろうから、日本刀の俺に分があるかなんて考えたけど、体育館だと話は違う。


……どうして俺は、松田に飛び掛かれなかったんだ。


背中を向けている時に襲い掛かれば、殺せたかもしれないのに。


飛び掛かるのを忘れていたわけじゃない。


恐ろしいまでの威圧感に、俺の身体が動かなかったのだ。


そうして歩いた体育館までの廊下。


先に中に入っていた松田は、すでに照明を点けていたらしく、薄暗い光が天井から降り注ぐ。


「随分のんびりだったじゃないか。明るくなるまでに少し時間が掛かるけど、それまでには終わるから良いだろう?」


右手で前髪を掻き上げ、見下ろすような視線を俺達に向けた。


隙だらけに見える……そこが恐ろしい。