殺戮都市

俺は松田よりも強い……と言っていた中川が、本人を前にして何も出来ずにいるだけ。


蛇に睨まれた蛙とはこの事か。


「くっ!はぁ……はぁ……ますます暴君の貫禄が付いたってか。冗談じゃないぜ!」


そう言ってはいるけど、逃げようとは言わないんだな。


こんなに怯えていてもまだ、勝てるなんて思っているのか。


校長室を出て、廊下を歩いて行く松田の背中を見ながら、俺達は歩き出す事さえ出来ずに。


「真治少年、いざとなったら私が達也をなんとかする。だから恐怖に飲まれるな」


そう言い、恵梨香さんが俺の手を握る。


グッグッと強く握られた手。


ほんの少しだけ、松田に対する不安が和らぐ。


「考えてても仕方がないな。作戦は単純だ、さっきやったみたいに俺が全力で叩き潰すから、お前らは松田をそこに誘導してくれ」


首を横にブンブンと振って、恐怖を振り払うように歩き始めた中川。


体育館に行く……それ自体が罠の可能性もあるけどどうなんだろう。


こんな広い学校に、松田が一人だけっていうのもおかしな話だ。


「恵梨香さん、大丈夫ですか?手が震えてますけど」


繋いだ手から感じる震え。


恵梨香さんは返事をするかのように、俺の手を握り返した。