殺戮都市

一歩も踏み出せないのは、恵梨香さんも中川も同じようで。


指一本、動きを監視されているかのようで動かす事が出来ない。


これが北軍最強の男、松田なのか。


「ふざけるな!だからと言ってお前が奪って良い命じゃねえだろ!神にでもなったつもりかよ!」


中川が吠えても、松田は振り返ろうともしない。


それどころか、俺達に背を向けたまま端末を取り出して、その画面に視線を落としたのだ。


何か、特別な操作をしようとしているわけでもなく。


そして、俺達に語りかけるように言葉を発したのだ。


「どうあっても俺に歯向かおうと言うなら、場所を変えようか。ここは狭い。丁度体育館もグラウンドもあるんだ。俺について来いよ、そこで相手をしてやる」


ペースを完全に松田に掴まれている。


武器も取り出さずに、無防備に俺達に向かって歩いて来る松田に対して、何もする事が出来ないのだ。


邪魔だと言わんばかりに俺を押し退け、部屋を出て行く。


すれ違った瞬間感じた殺気に……生きた心地がしなかった。


そう感じたのは俺だけじゃないだろう。


中川だって額に汗が吹き出して、それを拭う事も出来ずに立ち尽くしているだけだった。