殺戮都市

その声に俺が振り返ると、優が手を伸ばして迫っていた。


そして、俺に飛び付くように抱き付いたのだ。


「絶対死んじゃダメだからね。また会いに来てよ」


果たされない約束……そんな約束をするくらいなら、何も言わずに去ろうとしたのに。


ギュッと抱き締めて放そうとしてくれない。


困ったな。


嘘なんてつきたくないのに。


だけど、これも亜美と優の為だ。


「分かってるよ。また来るからさ、それまで大人しくしてろよな」


そう言って優の頭を撫でると、俺の身体を締め付けていた腕から力が抜けた。


「うん……約束だから。早く戻って来て」


俺から離れた優が、涙を拭って笑顔を見せてくれた。


「じゃあ、行って来るから」


優の頭から手を離した瞬間、少し寂しそうな表情になったけど……これで良いんだ。


優と亜美、二人に手を振って、俺は恵梨香さんと共に歩き出した。


振り返ると、いつまでも二人は手を振っていて、その度俺も手を振る。


そんな二人の姿が見えなくなった所で……急に寂しさが俺を襲い始めたのだ。


もう二度と会う事はない。


俺の帰りを待ってくれた人達の別れだった。