朝は曇っていただけなのに今は土砂降りで、わたしは傘を持ってきていたけど一之瀬くんは持ってきていなかった。




だから、恥ずかしいけど仕方なく相合い傘をして帰ることになった。




「菜穂、家に帰ったら病院に連れて行ってもらえよ」



「あ、うん。行くよ」



連れていってなんかもらえるわけ無い。



病院に行ってしまったら望乃華の帰宅時間に間に合わない。



きっとお金と保険証だけ渡されて、一人で病院に行かされるんだ。



望乃華が生まれて、小学校の高学年の時からそうだった。



“お姉ちゃん"はいつだって我慢しなければならない。