華野先生は、青ざめた顔に恐怖を乗せて保健室から走り去っていった。
ベッドの上で、動けないわたしの方へくるっと顔を向けた一之瀬くんは、もう何時もの一之瀬くんに戻っていた。
「菜穂、」
わたしの名前を呼んで、そっと頬をその大きな手で撫でた。
ぽろり、となぜだかその温かさに涙が溢れた。
「一之瀬、くん」
彼を呼べば、今度はギュッと抱きすくめられた。
「泣け。辛いなら、泣けばいい。じゃないとお前、全部辛くて壊れちまうぞ」
なにが、なんて言わなくてもわかった。
もう既に、心が悲鳴をあげていた。
無視し続けるのには、限界があったんだ。
