ふと私は、ぶつかってきた人の顔を見た。
黒い髪に赤い頬。
なんというか‥そう、一言で言えば童顔だ。
「おい矢田ーッ!!
お前何やってんだよ。」
少し遠くから、この男の子を呼ぶ声が聞こえる。
「ははっ。誰かにぶつかっちまったみてー!!」
すると男の子はスクッと立ち上がり、私に謝りの言葉もなく立ち去ろうとした。
それにムカっときて
「‥ちょっと??」
と、少し強い口調でその子を呼び止めた。
男の子は、"ん??"と振り返る。
「人にぶつかっといて、ごめんを言うのはスジじゃない??」
腰に手を当て、その子をキッと睨む。
「そこに立ってたお前が悪いんじゃねーの??
まあ一応謝ってはやんよ。
ごめんな、どチビ。」
そいつは"どチビ"を強調し、私に背を向けた。
確かに私は、中2して身長が153センチしかない。
しかし、この男の子も2、3セらいしか、私と身長が変わらない。
「なっ‥ちょっと待ちなさ‥!!」
と言いかけた時には男の子の姿はなく、予鈴がなり、みんな自分の席へ座りはじめた。
