「いたた…。」
朝目が覚めると、頭の痛さと、突然の吐き気に襲われた。
口を抑え、トイレへ駆け込もうとしたが、真っ直ぐ歩くことさえできなかった。
単に、二日酔い。ってやつだが。
いや、正確には、三日酔いくらいしていた。
一晩で、ウィスキーのボトルを一人で二本空け、初めに始まったビールを、ジョッキ五杯分、あと…。
うぅ。と、トイレにしがみついていた。
毎晩の寝不足。
毎夜の涙。
アルコールの神様、バッカスに取り憑かれてか、僕の右目は、普通にしていても、眼帯をしているような、深紅の色。
うめき声を上げながら、四つん這いになりながら、散らかった部屋にある、鏡を見ては、
「独眼竜だ。」
と、一人虚しく笑っていた。
息を吸っても吐いても、アルコールの匂いで、立つのさえ億劫(おっくう)。
それでも、バイトに行かないと。と思いながら、平気な顔をして、おはようございます。と、カウンターに立つ。
常連さんから、
「目、大丈夫?」
と、何回聞かれただろう。
いつものオジサンには、
「酒好きのゆうちゃんには、レッドアイの名前がピッタリだな。」
外は暑いのに、少し涼しくしてくれたジョークに、僕は笑っていた。
「あんた、ちょっと休みなさい。」
その時、僕は、朝は喫茶店、午後から定食屋、夜からママのいるバーの仕事をしていた。
ギャル男くんから、モデルやホストの話も持って来られたが、自分に自信が無く、そういった仕事は、断ってばかりいた。
「いや、大丈夫ですよ。働かせてください。」
喫茶店の経営者も、定食屋の責任者も、皆、休みなさい。と、休暇命令が下された。
勿論、暇を作りたくなくて、全てに、嫌です。と言ったが、首を横に振られるだけだった。
大人達の繋がりで出来た街なのか、口裏を合わせられたように、三日間、全てのバイトを休みにされる。
「お疲れ様でした。」
今日のバイトを終え、しょぼん。と猫背の僕は、帰り道を歩く。
携帯電話を開くと、珍しくメールが入っていた。
新着メール1件。
受信ボックスのフォルダ名。
大切な人。
あっ、彼女からも連絡くるんだ。なんて皮肉なことを思っていたが、内容を見るのが怖くて、携帯を閉じる。
ポケットに両手を突っ込み、セピア色のスニーカーを、交互に動かしながら。
もう、空は明るくなり始めて、こんな時間に返事すると、また、嫌われる。と思い、一眠りしてから、もう一度、携帯電話を開くことにした。
無駄に広い部屋に戻り、ベッドに横たわる。
少しの間、眠りについた。
疲れた身体を布団に預け、音を発する身体。
鳥の声も聞こえ出してきたことに、少しの時間しか眠れなかったことに、また、気付かされる。
もう、どれくらい、あいのことを考えただろう。
笑っている姿を思い出しては、これ以上、あいの困った声を聞きたくなくて、隣にいるのが自分じゃなくてもいいから。そんなことを、ずっと考えて、答えを決めたんだ。
朝目が覚めると、頭の痛さと、突然の吐き気に襲われた。
口を抑え、トイレへ駆け込もうとしたが、真っ直ぐ歩くことさえできなかった。
単に、二日酔い。ってやつだが。
いや、正確には、三日酔いくらいしていた。
一晩で、ウィスキーのボトルを一人で二本空け、初めに始まったビールを、ジョッキ五杯分、あと…。
うぅ。と、トイレにしがみついていた。
毎晩の寝不足。
毎夜の涙。
アルコールの神様、バッカスに取り憑かれてか、僕の右目は、普通にしていても、眼帯をしているような、深紅の色。
うめき声を上げながら、四つん這いになりながら、散らかった部屋にある、鏡を見ては、
「独眼竜だ。」
と、一人虚しく笑っていた。
息を吸っても吐いても、アルコールの匂いで、立つのさえ億劫(おっくう)。
それでも、バイトに行かないと。と思いながら、平気な顔をして、おはようございます。と、カウンターに立つ。
常連さんから、
「目、大丈夫?」
と、何回聞かれただろう。
いつものオジサンには、
「酒好きのゆうちゃんには、レッドアイの名前がピッタリだな。」
外は暑いのに、少し涼しくしてくれたジョークに、僕は笑っていた。
「あんた、ちょっと休みなさい。」
その時、僕は、朝は喫茶店、午後から定食屋、夜からママのいるバーの仕事をしていた。
ギャル男くんから、モデルやホストの話も持って来られたが、自分に自信が無く、そういった仕事は、断ってばかりいた。
「いや、大丈夫ですよ。働かせてください。」
喫茶店の経営者も、定食屋の責任者も、皆、休みなさい。と、休暇命令が下された。
勿論、暇を作りたくなくて、全てに、嫌です。と言ったが、首を横に振られるだけだった。
大人達の繋がりで出来た街なのか、口裏を合わせられたように、三日間、全てのバイトを休みにされる。
「お疲れ様でした。」
今日のバイトを終え、しょぼん。と猫背の僕は、帰り道を歩く。
携帯電話を開くと、珍しくメールが入っていた。
新着メール1件。
受信ボックスのフォルダ名。
大切な人。
あっ、彼女からも連絡くるんだ。なんて皮肉なことを思っていたが、内容を見るのが怖くて、携帯を閉じる。
ポケットに両手を突っ込み、セピア色のスニーカーを、交互に動かしながら。
もう、空は明るくなり始めて、こんな時間に返事すると、また、嫌われる。と思い、一眠りしてから、もう一度、携帯電話を開くことにした。
無駄に広い部屋に戻り、ベッドに横たわる。
少しの間、眠りについた。
疲れた身体を布団に預け、音を発する身体。
鳥の声も聞こえ出してきたことに、少しの時間しか眠れなかったことに、また、気付かされる。
もう、どれくらい、あいのことを考えただろう。
笑っている姿を思い出しては、これ以上、あいの困った声を聞きたくなくて、隣にいるのが自分じゃなくてもいいから。そんなことを、ずっと考えて、答えを決めたんだ。

