『あのさ、やっぱり、あいが好きだから、戻ろうよ。』

不安になっては、また、自分から連絡していた。

一時間経っても、一日経っても、来なくなった返事に、また、不安になって、

『忙しい?元気にしてる?』

そんな言葉を、送っていた。

『うん。元気にしてるよ。』

直ぐに返される返事に、もう、好き。の言葉を言ってはいけない気がしていた。

あいの前では、いつも、子供のように、我が儘で、良い男になれない自分。

『あのさ、やっぱり好きだから、戻ろう?戻れないなら、曖昧な関係なら、いらない。』

こっち。に来てから、もう、一年の半分くらいが経っていた。

自分から言い出した、別れよう。から、半年の半分くらいが経っていた。

前なら直ぐに返ってきた返事も、どうせ、また、遅くなることを知っていたけれど。

失うのが嫌で、電話する勇気さえ、僕には無かった。

「おい、ゆう。飲みに行くぞ。」

下を向いて、隠しながらメールを打っていた僕に、突然、常連客のホストのお兄さんが、声をかけてくる。

慌てて、はい。と、返事をしたら、経営者のママから、もう、上がっていいわよ。と言われた。

「少し、待っててください。」

そう言いながら、裏に行き、カウンターの向こう側へ、足を運んだ。

「じゃ、行くか?」

最近、元気が無いぞ。と、頭を撫でられ、二人一緒に歩き始めた夜の街。

「金は気にするなな?」

と言われながら、僕は携帯電話を確認せずに、ただ、同じスピードで付いていく。

「いらっしゃいませ。」

開かれたドアの向こうから、カッコいい人達が、五人くらい。

扉の奥には、ギター、ベース、ドラム、楽器の数々。

「ゆうは、ミュージシャンになりたいんだろ?」

ギターを一本抱え、飛行機を降りたのは間違えなかった。

「ブラウン管の向こう側も良いけれど、こんなミュージシャン達もいることも、勉強だな?」

優しくしてくれる、ホストのお兄さん。

席に座って、女を三桁くらい抱いた。とか、男はこうなんだ。と、その生き方は、正しいのか分からないけれど、凄く気持ちが癒された。

ほら、作られたドリンクを、僕が飲んでいる間にも、隣に座っている若い女の子に話しかけているくらい。

少しだけ、退屈になり、携帯電話を開くと、

新着メール1件。

慌てて、ちょっと、電話してきます。と伝え、外へ飛び出した僕がいた。