「行ってくればいいじゃん。」

「うん。」

笑って話す僕に対し、罰が悪そうな顔をするあい。

「なになに?彼氏だし、妬かないよ?」

彼女と遠距離中の彼氏が、帰って来る。と言う。

うん。としか答えないあいは、何を考えてるのかな?

見慣れた景色の中にある砂場の上を、コンビニ袋が駆けて行く。

「でも、エッチしたら妬くよ。」

付き合っているのだから、本気半分、冗談半分で言う。

一度、頷いただけだが、何故かあいが可哀想に思えた。

「キスまでは、許してやる。」

どうにかして、あいの笑顔を見たい。

「あのさ、そんなことで、俺は、お前を嫌いにならないよ?」

精一杯の言葉を言えた。

本当は、嫌だよ。寂しいよ。

でも、僕には、それを言う資格は無い。

だって、『彼氏』の肩書きを持っていないから。

「うん。」

でもね、君に好かれてるんだ。って絶対の自信があった。

だから、精一杯の強がりを言えた。と思う。

「彼氏なんだし、大事にしてあげなね?先輩も楽しみにしてるって。」

僕の右手が、あいの頭を撫でて、彼女の右肩へ休息を求める。

「そんなに後味悪い顔するのなら、俺との関係を終わりにしようか?」

分かってほしいが、これが僕の甘え方。

一番悪い甘え方だ。と知っている。

「嫌。」

そう言ってくれるって知っている。

「ゴ、ゴメン。違う!!ゴメンね。俺も不安でワザと言ったんだよ…。」

突然の、彼女の涙。

でもね、それを見て『嬉しい』の感情が出てくるほど、僕は子供なんだ。

それでも、君の涙を見たくなくて、愛しくて、一度彼女の肩から離れた手を背中に回して、抱き締めた。

「泣かないで。」

彼女が、少しだけ強く握り返したのが分かり、僕も強く握り返した。

「く、苦しいよ。」

あいが笑うから、僕も笑えた。

彼女の彼氏は、僕の先輩。

だけど、罪の意識より、あいを思う気持ちが、強くなっていた。

あいが彼と会う日、一人でいたくなくて、僕も彼女と時間を共にした。

あいと昨日も同じ場所で会ったのに、直接、話を聞きたかった。

「どうだった?」

「普通だよ。」

話しを聞くと、先輩の車でドライブをしたりしたらしい。

「エッチした?」

「しないよ。」

「キスは?」

聞く順番が逆だと思ったが、エッチをしていないのなら、何でも許す(妬かない)と、決めていた。