賑わう人達。

綿雨、焼き鳥、ヨーヨー。

地元のお祭りは、小さいながらに、人気があるようだった。

地元の祭りだからこそ、知り合いと会う確率が、増えるわけで。

「そんなに嫌なら、帰れ。」

あいは、知り合いとは、会いたくないみたいで、僕だから、嫌なのかな。と、落胆していた。

「嫌じゃないけど…。」

「けど、何?」

「いや…。」

彼氏じゃないから、一緒に歩けない。みたいな事を、言いたいのだろう。

二人でいる時は、笑うあいを見ていたからこそ、悔しかった。

僕は、自慢したいくらいの、女の子なのに。

小さな子供。

素直なカップル。

馬鹿騒ぎする、同じ年くらいの子達。

羨ましくて、本当に悔しかった。

離れたら、面倒臭い。と思って、繋いでいた手だったが、僕なりに気を使い、あいから離れた。

「はぐれるなよ。」

素直すぎるあいは、頷いて付いては来るが、それも悔しかった。

時折り振り替えって、あいを確認すると、異性の友達や同級生らしい友達と、話をしているのを確認すると、他人のフリをし、かき氷屋の前で、並んだりした。

長い列に入り、僕の番へ来る直前に、あいが割り込んで来る。

「君、誰?」

「あい、苺が良い。」

何故、原価も無いに等しい氷のために、お金を、払わなくちゃいけないのか。

「シカトかよ。学生さんは、お金が無いのよ?」

なら、あいが。って言ったが、結局は僕のプライドが邪魔をして、あいの分まで、買うこととなった。

人混みは、あまり好きではない。

しかし、行事ごとを誰かと過ごすのは、好き。

矛盾だらけの僕は、また、さっきの僕へ、戻っていた。

「友達と遊んできなよ。帰る頃になれば、電話してくれたらいいし。」

返ってくる返事は分かっているが、甘え半分、本気半分みたいな。

「いや、いい。」

ワザとらしく溜め息を漏らし、一瞬だけあいの手を引き、海辺の石垣に座った。

そこには、人が沢山、溢れている。

出店は向こうにあるのに、何故、こんなに。

暗くなった遠くの海岸で、何かしら、動く人達が目に付く。

辺りを見渡せば、一人で座ってる人、ビールを飲んでる人、カップルで肩を寄り添う人達が、向こうの海を見ていた。

僕達だけは、話す事も無く、その時間を、無駄に使っていた。

「おっ、そろそろか。」

後ろに座る、麦わら帽子を被るオジサンが、そう呟くと同時に、それは、始まった。