夜とは言え、まだ少し肌寒い。

「何か買おうか?」

短い旅の途中にある、二十四時間のお店。

二人は、喉を潤すアイテムを手に入れた。

「持つよ。」

二つの、仲が良いペットボトルが、ビニール袋の中で、何度もぶつかり合う。

「今日は、どこ行くの?」

目的地も無い二人は、神様から見たら、小さな迷い子なのだろう。

「ん~。球場に行こうか?」

苦し紛れで出てきた場所は、今の場所から、歩いて十五分くらいかかる所だ。

今日は、環境汚染防止のために、初めてのデートは、お散歩。と言う可愛いもの。

と言いつつも、車に乗せて。とは、図々しい。と思い、夜を一緒に過ごしたい。と言った結果が、これだ。

「車にすれば良かったね?」

僕の心を見透かした様な言葉に、そう?と強がってみせる。

きっと、あいが疲れたから、そう言ったと、思うけれど。

「ゴメン。」

僕の左側を、何度も通り過ぎて行く車達が、少し憎かった。

「何で?全然、いいよ?」

その優しさに、甘えてしまう。

「喉、乾いた。」

繋いだ手を一度離し、歩くスピードを止め、袋から、一つのペットボトルを、あいに手渡した。

「ありがと。」

小さなケーキ屋を追い越して、閉まったガソリンスタンドを抜け、目的地へ辿り着いた。

球場と行っても、公園と呼んだ方が、頭に、浮かべやすいかもしれない。

夕方時は、中学生や社会人達が、野球やサッカーを楽しむ場所も、夜には静かな場所へと、変わっていた。

「星が綺麗だね?」

空を見上げたあいの手を、しっかりと握っていた。

「流れ星、見たことある?」

自慢気に話す僕にあいは、小さい頃に。みたいなことを言った。

「ならさ、海行こう。海。」

あいの家、勿論、僕の家からも、十分程度の場所にある海へ、行こう。と提案した。

あいは笑いながら、いいよ。と言ってくれた。

呆れて笑ったんだな。と分かって、ゴメン。と言った。

折角、時間をかけ訪れた球場。

それなのに、その道のりを、巻き戻ししなくてはならない。

時間は戻ることなく、さっきのコンビニを通り越し、更に十五分を歩き、やっと、海へ着いた。

「はい。」

疲れたであろうあいに、軽くなった飲み物を渡す。

「ありがと。」

静かな波音を聞きながら、月の無い満点の星空を、座って見上げた。