また、いつもの場所に来ていた。

誰かの側にいたい。と、思う気持ちが、いつの間にか、今日もあいと会う。に、変わっていた。

「ねぇ、聞いてる?あい。」

「ん?」

「あい!!」

「うん?」

呼び捨てで呼んでいい?と尋ねると、皆呼び捨てだから。と言われ、わざとらしく、名前を呼んだ。

夏休みになり、ほぼ毎日の様に、あいと会っている。

まだ、あいへの気持ちは分からないが、確かなのは、彼女達とのメールの回数は減っていた。

昔は、あんなに大きく感じた滑り台は汚く、今日のブランコは揺れていないし、星がとても綺麗な夜だった。

あの時以来、あいに、触れてはいない。

彼氏がいる。と、頭の中で、分かっていたからだろうか。

だけど、時折り、可愛い意地悪を、あいにする。

「キスしていい?」

困る顔も、可愛いから。

「え~。」

ほら、可愛い仕草は、今は、僕だけの物だから。

「キス…しようか?」

え~。を、また、期待する。

「…いいよ。」

と、予想外の答えで、僕を困らせる。

「え~。」

と、僕が言い、戸惑いを隠しつつ、笑うあいに、

「…しないよ。」

と、しか言えなかった。

うん。と、笑って言われ、こんな子を困らせてはいけないな。と、心に誓った。

だから、聞きたくもない彼氏の話を、聞いてみたりした。

その話の間、少しだけ生い茂った草達が、僕を馬鹿にするように笑う。

星達も、聞きたくないよ。と言って、雲の後ろに隠れた。

アレが来る前に、どこからか聞こえてきたクラクション音に、助けられた。

人から人を奪うつもりはない。

残るのは、切なさだけだ。と、知っていたから。

あいが足を掻いて、蚊は嫌い。だと言う。

彼氏の話を聞いたせいか、たまらず、帰ろうか?と言うと、うん。と言うあいに、また、切ない感情が沸き出てくる。

思い起こすと、憧れていた人と、一緒にいれるだけで幸せなのに。

どこかで、何かに、嫉妬してしまったようだ。

いつものように、あいの隣りで星を見上げながら、時折り、フラつきながら、あいの家の前に着いた。

「あい。」

「ん?」

「おやすみ。」

おやすみなさい。と、笑うあいの返事に、手を振った。