「あいさん。」

ふと、思った。

いつから、名前で呼んでいたっけ。

周りの人が、名字で呼ばなかったからか、高校生になってから、僕も名前で呼んでいた。

こんな小さなことまで考えてる自分は、やっぱり、小さいのかな。

普段通りの、学校帰り。

彼女と街をブラブラした後、いつものバス停に着いた。

いつも、あいさんいないかな?なんて思うのは、彼女に失礼だろうか。

しかし、偶然を装ったが、その偶然で、同じ時間のバスに乗ったことは、初めてあいにメールをした日だけだった。

また、いつもの日々を繰り返し、眠気を誘う机の上で、顎をつき、黒板ではない、外の運動場を見つめていた。

「ゆう。今のとこを読め。」

何故か、先生達には、下の名前で呼ばれていた。

チャイムギリギリまで、適当に皆を笑わせる話をし、誤魔化す。

「いいから、読」

キ-ンコ-ン…。

呆れた顔で、笑う先生。

「やった~!!飯、飯~!!」

気付けば、その時間に、メールや電話の回数が増えていたことに気付く。

勿論、その相手はあいだった。

電話をしている最中、決まって友達から、

「これ?」

と、小指を立てた合図。

「アホか。」

とだけ言い、友達を追い返すのが、日課になっていた。

それに良く思わないのは、当たり前だが、同じ学校にいる彼女。

喧嘩ばかりしていたから、余計に喧嘩の数が増えた。

だから、またあいに逃げるのか?と聞かれたら、そうではない。

あいには彼氏がいるし、関係を持ちたい訳でもない。

いつも、相談を聞いてもらっていたから、あいの愚痴も聞いてあげたい。と言うのは正論で、誰かのヒーローになりたい。と言うのが、正直な気持ち。

人に頼られると、自分の存在を確認できるから。と、自己陶酔する。

ざわめく教室が嫌いで、廊下の隅に隠れて電話なんかしている。

ついこの間、あいがここにいた。と思うと、寂しい感じもした。

教科書を借りたり、ノートを借りたり、メールをする前も、あいと、少しだけ仲良くなってた事を思い出す。

それを断ち切る予礼が、すぐに鳴り響く。

あいは専門学校に行っているが、ここにもいた訳だから、僕の縛られた時間を知っている。

「授業、始まるよ?じゃ、またね。」

と、言われ、電話を切り終えた。

平凡な毎日。

つまらない毎日。

そして、昼休みに、彼女と喧嘩をする毎日。