「なあ、ナオ。Bクラスに茶髪の女子って何人いるんだ??」

「おいおい、いきなり髪色聞いてどうしたんだよ優。」

軽いウオームアップでランニングとストレッチングしている最中に優は普段と違う素振りを見ていた。明らかに挙動不審に回りをキョロキョロと何かを探す様な彼らしくない行動を取っていた。直元はそんな優を見て、変な物でも食べたのか??と笑っていた。

「ほとんどの女子は染めてるぞ?髪」

「茶髪が地毛の女子だ。」

「ああ、それなら二人いるぞ」

「どこ??」

優に聞かれた直元は生徒の人だかりを暫らく見つめてから、指を指した。指す方向はその人だかりの中にいる数人で集まった少女が壁際に背を向けてお喋りをしている。その女子の集まりの中で低身長なマスコットキャラみたいな茶髪の少女がいた。優の視界にその子が映ると違うと呟く。どうやら、彼が探している少女とは違う人だったようだ。


「もう一人は誰??」

「ああ、それなら保健委員の子だよ」

「あの人だかりの中にいるか??」

「あー、うーんと…あ、あの子だよ」

ほら、あそこのと言って直元はさっきと違う方向を指していた。人だかりの中では無く一番直元達に面してその人だかりの一番右の方に。そこには一人の少女がポツンと立っていた。一瞬そこにはお人形でも立ってるのかと見間違いそうになる位に動かず唯突っ立っていた。




明るい夕日色と茶色い長い髪をカントリースタイルのツインテールの髪型。澄んだ夕日色の瞳、日焼けすらない真っ白な肌に可愛らしい小さな桜色の唇。赤いジャージを着て両手をポケットに深く突っ込んでいた。

「あれが、保健委員の子だーーって優?!」

直元はギョッとした。何故なら、さっきまで隣に座っていた筈の優は忽然と消えたのだ。辺りを見回すと見つけた。背後でしか確認出来なかった直元だったが、優が真っ直ぐにその少女に向かって早歩きをしていた。


おいおい、いきなり近づいてどうすんだよ。


あぐらを掻いて頬杖する直元は優が段々その少女に近づいて行くの見ていたらーー予想外の出来事が起きた。愛しい者を優しく包み込む様に優はその夕日色の茶髪少女を抱き締めていた。

「会えた、ようやく!!ずっと…!ずっと!!」

必死に込み上げるドロドロとした感情を抑えるかの様に切なげな声でそう呟く優。より一層に彼女を抱き締める彼の行動を見ていたのは直元だけだった