清洲高校に入学してから数日が経ち優には友達も沢山出来た。元々人付き合いも良い方だが単純に優は友達だとしてもある一定の距離を置いてる様にしていた。聞けば同じ中学の出身も居ない事に物寂しさを感じるが優はそんな事なんてどうとでも良かったのだ。部活動の見学を終わらせた後にお昼になった。

「屋櫻~くん!一緒に食べない??」

そんな時優に声を掛ける一人の女子が居た。作り笑顔を繕ってヘラヘラと優を見つめる。「イエス」と返事を聞きたいらしいその少女を良く見れば顔立ちは良くはあるが。少しメイクをしてるのか顔に綺麗さを引き立たせている。ウエーブを掛けた腰までに靡く桃キャラメル色のハーフアップを揺らして上目使いで優をチラチラと見る。

「おい、あの子って二列目に座ってる宮良桃香だろ??」

「可愛いな!!良いな―そんな可愛い子に優が声掛けられるとは・・・」

後ろでは宮良桃香が優に声を掛けた時点で、まさか彼女から彼にお昼のお誘いが来るとも思っても無かったらしく。驚いたトーンを混じらせてヒソヒソと話し合う。すると片手に青い風呂敷弁当を持って宮良をただ、見る優は暫らく俯いて考え事をしてるか数秒経つと漸くを上げた。

「ごめん、俺友達と先に食べる約束をしてるんだ。また今度で良いかな?」

ニコッと爽やかな笑顔で笑い掛けて行き優は教室を去った。
先程の笑顔が余程彼女に効いたのだろうか、優が立ち去った数秒後に赤面にしながら叫び声をあげていた。そんな声なんぞ聞こえないだろうに優はスタスタとT字の廊下を左に通って中庭に出ると真ん中にある大きな樹の下に座り込み弁当を開け始める。

「おーい、優良いのか??」

「何が?」

ふと、人懐っこい声が優の頭上に聞こえる。顔を上げるとそこには同級生の直元文義がいた。単純な笑顔を優に向けながら隣に座り購買で買ったらしい白包みを開いて姿を現した焼きそばパンに潔く被り付く。その光景を見る優は口に卵焼きを運んでお互いは黙って食べる事に集中する。

「っぷは!ごちそー様あ!」

「ナオ、お前食うの早ええよ。」

「空いてたんだから仕方ないだろ。」