一人夜道を歩く。

そこにいつもは感じない何かを感じた。
それは幽霊の類ではない。

背後からの気配に恐怖を覚えながら帰路を急ぐ。その時、確かに急に早まった私の足音とは違うものが聞こえた。

付けられている...!

先刻より浮かんでいたものが確信となった時、私は既に駆け出していた。

早く...!早く帰らないと...!

近頃ニュースに上がっている連続殺人事件が頭を過る。決まって同じ時間帯に連日女子高校生が殺されているのだ。

まさか。と自分の思考から掻き消そうと頭を振るったときだった。

グイッ

身体が後ろに引き付けられ、そのまま倒れ混む。そして視界に写り混んだのは闇の中で妖しく2つの紅い暉。

暉はゆっくりと近付き相手の顔が浮かび上がり、それが男だということが分かった。

先程まであれほど恐れていたそれを今は目が離せなくなっていた。これほどまでに冷静でいられる自分にも内心驚かされているのだ。

この人なら大丈夫。

そんな気がした。



男の纏うオーラが変化し紅い瞳が見開かれた刹那



ヴッ!



押さえ付けられていた力が私の腕から消え去り男が吹き飛んだかと思うと強くコンクリート壁に叩き付けられる。
そこに現れたのは男の比ではない程のオーラを放ったヒトだった。

今なら彼が助けてくれたのだろうとも考えられるが、当時体験したことのない感情で埋め尽くされ、冷静だったはずの脳は限界の域に達しようとしていた。

視界が霞む。まるで薄い靄がかかったかのようにはっきりと物を捉えることが出来ず気持ちが悪い。

薄れ行く意識の中で感じたのは冷たくも何処か温もりのある大きな手と、蒼く耀く優しい暉だった。