「ほら早よぉ行かんと、お兄ちゃんらもう行ってもうたよ」 そろそろ潮時だと思った母は、微笑みながらそう陽に諭す。 陽は、父の店を兄と共に手伝っているのだ。 「うん!じゃあ、行ってくるわ〜!」 陽はぴょんと立ち上がり、家を飛び出す。 誰もが、幸せだった。 苦労が絶えることはなくとも、4人は幸せだった。 そして、誰もが信じていた。 もうすぐ、5人でその幸せを噛み締めるのだと。 誰もがーーー陽達も、陽達の周りの人々も、信じて疑わなかった。