小児病棟

「悟……マジで行くの? もう帰んない?」

正哉は、少しおじげづいた口調で悟の背中に言葉を投げかけた。悟は、そんな正哉のほうへ振り返ると

「正哉、お前……怖いのかよ」

と、意地悪げに、にやけた。

「怖いっつうかさあ……見つかったら怒られるんじゃないの?」

正哉は、精一杯の強がりで悟を諭しにかかる。

「じゃあいいよ、俺は行くから」

悟はエレベーターから降りない正哉に業を煮やし、背中を向けた。

そんなやり取りを見ていた裕二は

「……俺も行ってみる」

と言ってエレベータから降り、悟のほうへと歩いていく。

「僕も行く……」

慶一も、そう言って二人に続いた。