小児病棟

「なんか、アルコールの匂いがきついね」

正哉はそう言って、目をしかめた。


「あ? あ、ああ、そうだな……」
悟も、鼻をひくつかせてうなづく。


「確かに、第十二病棟に比べアルコールの匂いは段違いにきついね……」

裕二も、そうつぶやいて顔をしかめた。

正哉は思った。ここに入院している人たちは、みな深刻な病気なのではないだろうか、と。そう思うと、自分たちがこんなところをウロウロしているのは、何か申し訳ないような思いにかられた。

「……なんかさあ、もう下に降りない?」

正哉は、みんなにそう提案した。慶一も正哉と似たような思いを感じていたらしく

「うん、なんかね……」

と言って、悟のほうを見た。

「それもそうだな……」

悟も、それには納得した。四人ともみな、周りの深刻さを肌で感じたのか、若干、探検する気をそがれたような心持ちになっていたようである。