「どうした?」
 
看護婦さんが裕二に聞いた。すかさずボートに同乗していた先生が看護婦さんに言った。

「足がつったみたいです。ちょうどオイルフェンスのあたりで……今日はちょっと水温が低かったみたいですね。でももう平気だよな?」
 
先生は裕二の頭をなでた。

「そう……ちゃんと歩ける?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ、体拭いておいで」

「はい」
 
裕二は元気に自分の荷物まで歩いていった。子供たちは、みなバスタオルを体にまといテント前に集まった。

「はい! みんなどんどんお代わりしていいからねー」
 
川端先生がオタマ片手に言った。

「やった! ちょうだい」
 
悟は、一番先に豚汁をもらう。それから子供たちが、我れ先にと豚汁に殺到した。

「大丈夫、まだたくさんあるから……」
 
川端先生は、汲んでも汲んでも豚汁が追いつかずパニックになりながらみんなに配った。

「うめえー!」

「あったまるなー」
 
子供たちは、海で冷えた体を豚汁で温めた。大きな寸胴に満タンだった豚汁が、みるみるうちになくなっていった。