「麻衣子ちゃん。」

「はい。」

「さっき自分が告ったん、わかっとる?」

「え、告るって。」

「俺に。」

「えっ!そんな、こと。」


青白かった顔がみるみる赤くなる。

やっぱり自覚はなかったらしい。天然なんか。なんやねん、可愛すぎるやろ。


「他の奴からの誘いは気持ちに応えられへんから断った言うてたやん。でも俺のデートには来てくれた。それってそういうことやんな?」

「それは、あの。」

「麻衣子。」


胸の辺りで所在なさげに置かれていた左手を握る。少し汗ばんだ手が熱い。


「好きや。俺と付き合って。」

「……はい。」


麻衣子の笑顔が街灯に照らされてきらきら光る。


「少し休んで楽になったら帰ろ。送ってくから。」


八月半ばの夜だった。

これまでの恋愛とは違う温かい幸福に満ちていたのは、熱帯夜のせいではなかったはず。