「せやったら一回デートしてくれへん?」

「えっ?」

「再来週あたりまた東京に出張やねん。二人でご飯でも食べに行かへん?返事はその後でええから。」

「……。」

「一度でええから。その後で返事聞かせてや。だめやったらすぐ諦めるし。」

「……わかりました。」


後にも先にもこんなに食い下がったことはない。このときの俺はどうかしていたんじゃないかと今でも思うけれど、麻衣子にもう会えなくなったらどうしようという不安の方が何倍も大きかった。

電話を切った後、【さっきは急にごめんな。】とメッセージを送ると、【こちらこそなんだかすみません。ご飯楽しみにしてます。】と返信が来た。


「社交辞令やんなあ、これ。」


強引にデートの約束を取り付けてしまってよかったのか悪かったのか。

しかし、せっかくデートすることになったのだから、とネットでいい感じの店を検索し続けて夜は更けていった。