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 それから2日が経った昼休み、お弁当とお茶のペットボトルを手に、鈴原は眉をハの字にしながら、コンビニで買ったお弁当の蓋を開ける俺の元へとやって来た。


「小鳥遊くん、ひなのと鳥居くんは?」


 さっき放送で先生が言っていたことを思い出し、伝えようとするも、口に放り込んだご飯に邪魔されてそれをほとんど噛まずに飲み込む。


「全クラスの委員長と副委員長、呼び出されてたから、それじゃない?」

「あ、……そうなんだ。そういえばひなの、副委員長だったもんね。」

「うん、中学の頃からあいつらずっとそうだったよ。ていうか、……鈴原も座れば。」


 ずっと突っ立ったままだった鈴原に言うと、鈴原は唐揚げとご飯のみと、なんとも身体に悪そうな俺のお弁当を一瞥し、

 空いた椅子をどこからか持ってきて、俺の机の半分を借りてお弁当の包みを開いた。


「……ずっと思ってたんだけど、小鳥遊くんいつもコンビニのお弁当か、パンだよね。」

「ん、結構うまいよ。」


 言いながら、唐揚げを一口で食べると、少し間を空けて、鈴原はふうんと言った。


 そして、俺の唐揚げ弁当の蓋に、そっと卵焼きを置いてきた。


 疑問に思って彼女を見ると、くすりと笑った。


「唐揚げばっかりじゃ、飽きちゃわないかと思って。わたしが作ったやつだから、ちょっと自信ないんだけど……。」

「……いや、ありがとう。」


 少し焦げた卵焼きをひょいと口に運ぶと、鈴原は少し不安げに俺の顔を見つめた。


 滅多にいないだろうけれど、生まれて初めて食べた手作りの卵焼きは、砂糖が入っていて甘くて、……彼女のように優しい味がした。