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 その次の週の土曜日。


 俺はいつも利用している駅前の時計台の下で、鈴原と待ち合わせをした。


 ここのすぐそばにある、大きなショッピングモールの最上階の映画館で、あの映画の続編を見る予定だ。


 約束の時間である午後1時よりも随分早く来てしまって、少し張り切ってしまっている自分がいることに、なんだか恥ずかしくて見て見ぬふりをした。


 ……それにしても、休日だからか、ものすごく混んでいる。


 俺はすぐに飲み込まれてしまいそうな人混みに、物憂げな視線を送った。


 ……約束の時間が近づく度に、時計を見る回数が増える。


 何度も見た腕時計の指す時刻は、前に見た時からさほど進んでいないことがほとんどで、なんだか馬鹿らしくなった。


 1時を少し過ぎたところで、鈴原は現れた。


「小鳥遊くん!ごめんね、……準備に時間かかっちゃって。」

「……いや。」


 いつもと違う、彼女の姿が目に入る。


 いつも綺麗なストレートだった髪は、ゆるくウェーブがかっていて、いつも幼く見えていた姿は、少し大人びて見えた。