キャンプ合宿、帰りのバスでは、クラスの誰かが持ってきたDVDが、車内に3つほど設置されたテレビから流れ始めた。


 数年前に流行ったファンタジー映画だ。


 そういえば来週、この映画の続編が上映されるという告知がやっていたことをふと思い出す。


 映画が好きでも嫌いでもない俺は、特に興味も示さずに、昨日寝不足だったせいからか、大きな欠伸が出てしまった。


 映画のオープニングが終わり、この映画の主題歌が流れ始めると、隣で眠たそうにカクカク揺れていた鈴原がハッと顔を上げた。


「あ、……これ、すごく好きだった。」


 誰に言ったわけでもないだろうひとりごとを言う鈴原の横顔は、とても輝いて見えた。


「……これ、来週2が上映されるよね。」


 テレビ画面を見ながら何気なく呟くと、鈴原の顔がこちらを見たのがわかった。


「えっ?ほんと?」


 初めて聞く鈴原の弾んだ声に、俺はつい笑みを零す。


「……前に、告知やってたけど。」

「そうなんだ、……見たいな。」


 そう、鈴原はまた、テレビ画面に視線を戻す。


 俺もつい気になって、寝ようと思っていたところを、映画を見ることにした。


 映画の主人公は、失ったものを取り戻したいと願うと、おかしな世界に吸い込まれてしまった。


「……行く?」


 鈴原の言葉から少し間を空けて、画面に視線を向けたまま言うと、隣で画面を食い入るように見つめていた鈴原が、ぽかんと俺の方を見た。


 返事を待つ間、らしくもない緊張をしてしまって、鈴原の顔が見られなかった。


「……行く。」