ことり公園。

***


 それから数日経過して、いつものように登校して、職員室の横を通過すると、鈴原が担任から沢山積み上げられたB5用紙を受け取っていた。


「……鈴原。」


 また危なっかしい動きで廊下を進もうとした鈴原を、俺は呼び止める。


 そして鈴原が振り向いた刹那、バランスを崩したその用紙は見事に床に散らばった。


「あ、あああ!」


 鈴原は間抜けた声をあげながら、慌てて用紙を拾い集める。


 同じように俺も身を屈め、手伝った。


「ごめん、手伝おうと思ったんだけど、……逆に邪魔した。」

「う、うん、大丈夫、大丈夫。」


 不自然な返事に訝しげな視線を送ると、一瞬目が合った鈴原はそれをすぐに逸らして、にこっと引き攣った笑いを見せた。


「……これ、どこに運ぶの?」


 気になりながらも、とりあえず目の前の仕事を片付けようと、自分の持っていた半分の用紙に、鈴原の持っていた同じ量の用紙を、更に半分奪った。


「あ、ありがとう……。えっと、教室に持ってって、今日の放課後、ホッチキスで綴じるんだって。」

「……なるほど。」


 目を向けた用紙には、大きく『キャンプ合宿 しおり』と書かれていた。


 おそらくこれも、行事委員の仕事だろう。


 それを憂鬱だと思う以前に、俺はこの前鶴田が言っていた台詞と、鈴原の不自然な態度の方が気になっていた。