***
「ちょ、危ない。」
よたよたと危なっかしい動きで、前も見えていない状態で階段を下りようとした背中を、俺は慌てて引き止めた。
「それ、……俺が運ぶから。」
きょとんとした黒目がちな瞳で俺を見つめるのは、鈴原だった。
その手には大きく積み上げられたノートがあって、鈴原の視界を遮っていた。
……この状態で、階段を下りようとするなんて、……なんていうか、こいつ。
見てられない。
そう思いながら鈴原の手から強引にそれを奪い取る。
「あ、……それ、職員室の、向井先生の机に運べって……。」
「わかった。」
そのままスタスタと鈴原の顔も見ないで進むと、ご、ごめんなさい、とバツが悪そうなか細い声が聞こえた。
そんな、ある日の事だった。
放課後、つい体操服を教室に忘れて、面倒ながらも慌てて引き返すと、
「ひなのって、……小鳥遊くんと、同じ中学校だよね。」
何処か聞き覚えのある声が聞こえ、その上自分の話題だったことに、入りづらくなり、なんとなく息を潜め、身を固める。
「小鳥遊?うん、そうだけど、……それがどうかしたの?」
さっきもひなのと言っていたし、この声はよく知っている、鶴田だ。
「うん、……わたし、小鳥遊くんと同じ委員やってるでしょ。なんだか少し、……嫌われちゃってる気がして。」
同じ委員、……その発言で、鶴田に話し掛けているのは、鈴原だとわかった。
……それにしても、どうすればいいんだろう、この状況。
「ちょ、危ない。」
よたよたと危なっかしい動きで、前も見えていない状態で階段を下りようとした背中を、俺は慌てて引き止めた。
「それ、……俺が運ぶから。」
きょとんとした黒目がちな瞳で俺を見つめるのは、鈴原だった。
その手には大きく積み上げられたノートがあって、鈴原の視界を遮っていた。
……この状態で、階段を下りようとするなんて、……なんていうか、こいつ。
見てられない。
そう思いながら鈴原の手から強引にそれを奪い取る。
「あ、……それ、職員室の、向井先生の机に運べって……。」
「わかった。」
そのままスタスタと鈴原の顔も見ないで進むと、ご、ごめんなさい、とバツが悪そうなか細い声が聞こえた。
そんな、ある日の事だった。
放課後、つい体操服を教室に忘れて、面倒ながらも慌てて引き返すと、
「ひなのって、……小鳥遊くんと、同じ中学校だよね。」
何処か聞き覚えのある声が聞こえ、その上自分の話題だったことに、入りづらくなり、なんとなく息を潜め、身を固める。
「小鳥遊?うん、そうだけど、……それがどうかしたの?」
さっきもひなのと言っていたし、この声はよく知っている、鶴田だ。
「うん、……わたし、小鳥遊くんと同じ委員やってるでしょ。なんだか少し、……嫌われちゃってる気がして。」
同じ委員、……その発言で、鶴田に話し掛けているのは、鈴原だとわかった。
……それにしても、どうすればいいんだろう、この状況。

