ことり公園。

***


「ちょ、危ない。」


 よたよたと危なっかしい動きで、前も見えていない状態で階段を下りようとした背中を、俺は慌てて引き止めた。


「それ、……俺が運ぶから。」


 きょとんとした黒目がちな瞳で俺を見つめるのは、鈴原だった。


 その手には大きく積み上げられたノートがあって、鈴原の視界を遮っていた。


 ……この状態で、階段を下りようとするなんて、……なんていうか、こいつ。


 見てられない。


 そう思いながら鈴原の手から強引にそれを奪い取る。


「あ、……それ、職員室の、向井先生の机に運べって……。」

「わかった。」


 そのままスタスタと鈴原の顔も見ないで進むと、ご、ごめんなさい、とバツが悪そうなか細い声が聞こえた。



 そんな、ある日の事だった。


 放課後、つい体操服を教室に忘れて、面倒ながらも慌てて引き返すと、


「ひなのって、……小鳥遊くんと、同じ中学校だよね。」


 何処か聞き覚えのある声が聞こえ、その上自分の話題だったことに、入りづらくなり、なんとなく息を潜め、身を固める。


「小鳥遊?うん、そうだけど、……それがどうかしたの?」


 さっきもひなのと言っていたし、この声はよく知っている、鶴田だ。


「うん、……わたし、小鳥遊くんと同じ委員やってるでしょ。なんだか少し、……嫌われちゃってる気がして。」


 同じ委員、……その発言で、鶴田に話し掛けているのは、鈴原だとわかった。


 ……それにしても、どうすればいいんだろう、この状況。