瞼を開くと、こめかみあたりが湿っているのを感じた。


 暖かな気持ちと、……哀しいような、苦しいような、そんな痛みが何故か胸の奥に残っている。


 長い長い、夢を見ていたような感覚。


 ひとしきりそれに浸ったあと、じっと見つめていた視線の先には真っ白な天井と、消えたままの蛍光灯が映っていることに気が付き、自分が横たわっているのがわかった。


 ……ここは、どこだろう。


 部屋の中は薄暗く、首を右側に動かすと、窓のカーテンは開けっ放しで、灰色の雲の隙間から顔を出した月が微かながらも輝きを放って、この部屋に光を与えていた。


 消毒液のような匂いと、入り乱れた沢山の機械。


 ベッドの周りは、桃色のカーテンに仕切られていた。


 ぼんやりとここは病院なんだと悟った。


 ふと、左手に温もりを感じて、わたしはそちらに目を向けた。


 知らない男の人がわたしの手をしっかりと握ったまま、丸椅子に腰掛けて眠っている。


 伏せられた瞼には長いまつげが揃っていて、頬には涙が伝ったような軌跡がある。


 それが気になって拭ってあげようと思ったけれど、身体は動いてくれなかった。


 ……そういえば、どうしてここにいるんだろう。


 わたしは、……わたし、……ずっと、何してたんだろう。