「なぁに!?」

距離が遠いからか、イルは大声を返してくる。


「白魔法!使い方わかるか?!」

「白魔法ぉ??」


イルはわけがわからない、というような変な顔をした。



「早く!!」

〈白魔法…それで我の結界を破れるとでも?先ほどはそんな魔法など使っていなかっただろう?どうやったのだ。〉


後ろに立つ魔王がアレンを見下ろす。

そして、腕を伸ばす。

それは三人に向かって黒い渦を巻いていた。



「…っやめろ!!」



慌てて剣を後ろに振った。


すると、それは魔王の腕に傷を負わせた。




〈!?〉


バッと跳んでアレンから離れた魔王はまじまじとその腕を見つめる。



「…え?」


アレンは剣をジッと見た。


魔法をかけていない剣の宝石は、普段の赤い色の中に微かに白い光が灯っている。



「何だ…?」


〈…想いの力とやらが…剣に注がれているのか…?フェニス。〉



魔王も剣を見つめそう言うと、指を鳴らしてフェニスを呼んだ。


直ぐ様フェニスと呼ばれた男は出てくる。



「お呼びですか、魔王様。」


赤い髪、赤い目。赤いローブ。

赤に染まったフェニスは魔王のもとに跪き、頭を下げる。



〈あの三人の相手をするのだ。〉

「あと二人を使ってもよろしいでしょうか。」

〈何人使おうとかまわん。〉

「御意。」



フェニスは更に深く頭を下げ、立ち上がって礼をすると穴から下に飛び降りた。