「で、どうする?」
どうやら動悸が治まったらしいアレンは不意にレイに声をかけた。
「え?」
「こっから上へは魔力使えないから行けないし、どっかから出れるのかわかんないけど」
「あ…」
それを聞いたレイは考え込む。
しばらくして顔を上げた。
「アレンがさっき行った泉に何かなかった?」
「…暗くてよく見えなかった」
少し残念そうに呟く。
それなのに自分の為に行ってくれたんだと、頬を染めながらレイはまた感激した。
「もっかい行くか?」
「…でも私、歩けないから。待ってるわ。一人で行ってきて。」
「………」
レイの返事にアレンは黙ってしばらく考えた。
そして、彼女の目の前にしゃがんだ。
「レイも行こ」
「えっ?あ…アレン?!」
レイは軽々とおんぶされていた。
「い、いいわよ。重くない?」
女の子のレイが気にするのはやっぱりそこ。
今までも何度かおんぶされてきたが、毎回気になる。
「全然」
そんなレイにアレンはしらっと答えた。
「ちゃんと掴まってて」
「うん…、?」
ゆっくり歩き出したアレン。
レイを気遣っているのか、走らない。
それはいいのだけれど。
「アレン…右腕どうかしたの?」
アレンの右腕は、レイを支えていなかった。
今までは、しっかり両腕で支えてくれていたのに。


