ガラスの破片のような球体の欠片が降ってくる。

が、アレンに当たることはなかった。

破片の雨が止んだのを察して、アレンは目を開く。



宿の裏の薄暗い場所。


戻った。



「…………。」


はぁ…と息を吐きながら目を閉じて、結界と剣の魔法を解く。

魔力をまた封印させた。


もう一度目を開き、正面に立つ美少女を見上げた。


「…レイ…」

優しく微笑む。


「アレン…っ」

レイはアレンが微笑んだ瞬間、涙声でそう言った。



そして…。


「アレンっ!よかったぁっ」



────思いっきり、抱きついた。



アレンの思考回路が停止する。

レイはアレンに抱きついたまま声をあげて泣き出した。


「よかったぁ…もう出れなかったりしたら、どうしようかと思った…」


その言葉を聞き、アレンは深く息をつきながら目を閉じてレイの肩に頭をのせた。

「…レイ、ありがとう…」

「ううんっ…いいのっ!よかったぁ…」

レイはひたすら泣きじゃくる。





しばらくして落ち着いた彼女は真っ赤になってアレンから離れた。

「…ごめんなさい、つい…」

「…ううん、本当にありがとう」

アレンはまた優しく微笑む。

澄んだ碧の瞳が、レイを見ていた。



「…帰ろう、宿に」

「…えぇ」