中ではアレンが途方に暮れていた。
「せっかく倒したのに…出れない」
斬った後、偽物はぐにゃりと歪んで紫の塊に戻ったあと、ゆらゆら揺らめいて消えていった。
すると、永遠に続いていた空間に壁ができたのだ。
やっと出れる、そう思ったのに。
(どれだけ攻撃しても意味がない…。)
結構魔力を使ったせいでかなり疲れた。
できれば早めに出たいのだが…。
「…レイ」
外にいるはずの仲間に呼び掛ける。
「レイ…聞こえないのか…?」
壁に寄り添い、額をこつんと当て目を閉じた。
「…返事、して…」
すると。
閉じた瞼の向こうから、水色の光が見えた。
「…?仲間の印が…」
目を開いたアレンは自分の腕に輝くミサンガをじっと見つめた。
そして。
「…レイ…?」
躊躇いがちに、願いも込めてもう一度名前を呼んだ。
『…アレン?!』
仲間の印から。
レイの声がした。
「…仲間の印が…通信機みたいになってんのかな…」
驚いて光るそれをまじまじと見つめる。
『アレン、聞こえる?聞こえるわよね?』
レイの声が話しかけてきた。
「…聞こえる」
『話せる!よかったわ!』
本当に嬉しそうな声がした。
アレンははぁ…と息を吐きながら少し微笑む。
『アレン、聞いて。この球体はね、中と外から同時に攻撃しなきゃ駄目なの。じゃないと、何をしても意味がなくて。』
何でそんなことわかったんだろうという疑問が浮かんだが、仲間の印の力が長く続くかわからないのでとりあえず頷いた。
頷いた後で見えないことに気付き、「わかった」と短く答える。


