その頃、球体の外では。
「…ふぅ」
レイがため息をついていた。
目の前には倒れたビーン。
「光の精霊さん、ありがとう」
〔どういたしまして〕
レイの隣に浮いている、羽根を生やした妖精が答える。
光の精霊。
数多く存在する精霊の中でもトップクラスの力を誇り、光・炎・水・地・闇の力を司る【五大精霊】の頂点でもある。
五大精霊は意志と言葉を持っており、自分が認めた精霊士以外が呼んでも絶対来ないのだ。
その呼び出すのが酷く困難な精霊をレイは呼んだのだ。
「あのね、もう一つお願いがあるの。球体からアレンを出してほしくて。」
球体は術者が倒れたのにも関わらず、その姿を保っている。
それだけビーンの妖術は強いらしい。
〔それは私だけでは無理。〕
妖精の返事を聞いたレイは驚いた。
「どうして?」
〔これはいくら外からやっても無駄だよ。中からやってもね。両方から同時に攻撃しなきゃ絶対無理。〕
妖精の言葉に、レイは俯いて考える仕草をした。
そして、顔を上げた。
「…それって、アレンと同時に攻撃しなきゃ彼が一生出られないってこと?」
〔そうなるわね〕
それを聞いたレイは真っ青になって球体に駆け寄った。
「アレン!アレン!聞こえる!?」
しーん。
「アレンったら!ねぇ!」
………しーん。
「アレン!返事して!」
レイは球体を叩きながらアレンに呼び掛けはじめた。
〔無駄だよ。外から声をかけても中には届かない。中から外にもね……!?〕
妖術は口をつぐんだ。
水色の光が目に見える。
レイの仲間の印が、輝きだした。


