「…はぁ、はぁ…。うぜぇ…」
アレンは早めに息をつきながら愚痴った。
目の前には、自分と同じ姿をした偽物アレン。
剣で闘い合っていたが、同じ実力の相手に勝てるわけがない。
本来なら負けるわけもないのだが、さすがに長い間戦うと疲れる。
それなのに偽物アレンは、人じゃないからか全くそんな様子を見せないのだ。
「…それ、反則だろ…」
ため息をつく。
これはもうどうしようもない。
偽物アレンが走ってきた。
「…要するにさっきの自分より強くなれってことか」
呟いて、正面を見据える。
「…《魔力解放》」
首筋に右手をそえる。
使うのは嫌だったが、仕方ない。
魔力も自分の力の内だから、相手も使うだろう。
でも、密かに頭の中で考えていた新しい魔力の使い方は、アレン自身がやったことがない為偽物にはできず、自分だけができる。
アレンはそう考え、それに賭けた。
魔方陣が現れ、魔力が身体に蘇る。
少しの不快感にアレンは顔をしかめた。
この感覚は何回しても慣れそうにない。
「…ふぅ」
魔力を中途半端に途中まで解放したアレンは一つ息を吐くと剣を持ち直した。
横に突き出し、左手は剣先に添えて、右手は柄を握る。
偽物も魔力を解放したが、アレンのその構えをとろうとはしなかった。
─────賭けには勝った。
でも、これからだ。


