「アレン!!」
球体のそばに駆け寄る。
球体は中が見えないし、音も聞こえない。
レイの目に映るのはドロッとブヨッとした紫の物体だけ。
球体はアレンを飲み込んだ途端その場から動かなくなった。
来ると思っていたから、少し驚く。
つついても叩いても殴っても、精霊で攻撃しても何も変化がない。
「…アレンっ」
涙目になりながら、レイは叫んだ。
すると。
「…成功成功ぅ」
後ろから聞いたことのある声がした。
「まさか精霊士が側にいたなんてねぇ。ま、目的の剣士は飲み込んだしいーやぁ。前は欲張って失敗したし。」
何やら反省を織り混ぜてしゃべるのは………。
「…ビーン!」
赤紫の髪をポニーテールに結った少女で魔王の幹部の、妖術師ビーンだった。
「名前覚えててくれたのぉ、レイ=アナチェルさん。ありがと」
そう言って妖しく微笑むビーン。
「アレンに何したの!これどけなさいよ!!」
紫の物体を叩きながらビーンに言った。
「やだ。これが目的なんだもん。」
「中はどうなってるの!」
「…知りたい?」
急に真顔になったビーンに一瞬驚くレイ。
ビーンは言葉を続けた。
「戦ってるの。死ぬまでね。」
ビーンの言葉に背筋をゾクッとさせるレイ。
「何と…戦ってるの?」
震える声で聞いた。
「…それはね、自分、かな」
言葉を一つ一つ選ぶように出したビーンは、自分の解答に満足したのかまた微笑んだ。


