ほのかに灯りに照らされる暗い外に出たレイは、辺りを走り回って目的の人物を探していた。

そして、見つけた。

宿の裏の空地に、剣を握るすらっとした人影を。


「アレン」

走っていたため少し乱れていた呼吸を整え、レイは静かに邪魔をしないように近づいた。

が、静かすぎたらしく気付いていない。


(あら?いつもなら気配だけですぐにバレるのに…)


それに、剣を握ってはいるが振っていない。


(修行じゃないのかしら。)


「アレン?」

更に近づいて肩を軽く叩いた。

「…えっ」

しばらくしてハッとした様にアレンが振り向く。

「あ…レイか…。どうした?」

「アレンが外にいるってギルクが言うから、修行してるのかなって思って。でも、違うみたいね?何してたの?」



……………沈黙。



アレンがそれを破った。

「…修行…しようと思ってたんだけど…」

「けど?」

「…ボーッとしてた」

その言葉にレイは吹き出す。

「ぼ、ボーッとしてた?アレン、眠いのなら寝たら?」

「……うん」

やや下に視線を落としながらアレンは呟く。

その様子にレイは首を傾げた。

「…何かあったの?」

「え?」

すぐにパッと顔を上げたアレンはきょとんとして聞いた。

(……かわいい…。)

「……かわ…じゃなくて!な、何でもないの!」

思わず口に出してしまいそうになって、慌てて言い直した。

かっこいいならまだしも、かわいいなんて言われたらアレンは確実に「…はい?」とか言って不機嫌になる。

「川…?」

「本当に、何でもないの!忘れて!」

必死なレイにアレンは首を傾げながらも「うん…」と答えた。