薄暗いその部屋に、二人の男女がいた。



一人は赤紫の髪をポニーテールにした少女。

跪いて頭を下げている。


もう一人は黒で全身を包んだ男。

豪華な真っ黒い椅子に座り、少女を見下ろしていた。





〈…クロムが死んだ〉

男は少女の話を聞いて呟いた。


〈なんと貧弱なことよ。相手は片腕だったというじゃないか。〉

「その通りでございます。片腕の心を乱した剣士に負けるなど、とんでもないことです。」

いつも活気な少女は、自分が叱られるんじゃないかとドキドキしていた。

〈そなたも、妖術を破られたらしいな、ビーン。〉

少女、ビーンは顔を上げた。


「お、お許し下さい…。詰めが甘かったです。今度は、確実に四人皆殺しに…」


〈よい。妖術師の力は剣士と違って重要だ。クロムは腕が立つから置いていたのに、どうやらあちらの方が上だったらしい。〉

ビーンは心底ほっとした顔で、男、主人である魔王を見つめた。


「ありがたき幸せでございます。」


〈ふん。感謝するがよい。では、もう下がれ〉


魔王に言われ、ビーンは一礼すると部屋を出た。











「あ~、毎回緊張するう」

ふぅ、と息を吐いたビーンはそのまま自分の部屋に向かっていった。




〈…次に駄目ならばあいつも用ナシだな〉


魔王が部屋を出る直前にそう呟いたのを、ビーンは知らなかった。