アレンはその場に立ちすくんだ。
今の、声。
『………アレン』
振り返ると、そこには母がいた。
さっき置いた虹色の石の欠片が白く光り、そこに母が映し出されている。
「……映像?」
『違うわ、実体はないけれど。これは、私の意思』
そう言った実体なき母。
『大きくなって。…あれから8年、だったかしら。ずっと見てたのよ。』
そこでふとアレンは不思議に思った。
「そうやって来れるなら…どうして今まで来てくれなかったんだ?」
嬉しさなどの感情の前にそれがきた。
『一度しかできないの。今回、やろうと思って。あなたがもう来ないかもしれないから。』
そこで母は首をかしげて微笑んだ。
『いい仲間を見つけたのね。』
「…うん」
自分と同じ碧の瞳を見つめる。
優しいそれは、紛れもなく母のもの。
『ちょっと残念、アレンに彼女ができちゃって。』
母はクスクスと笑い、呑気なことを言い出した。
「彼女?誰??いないけど。」
『ふふ、秘密。あなた、私が現れても嬉し泣きはしないの?小さい頃、よくしてたでしょう』
「…しない」
調子が狂う。
たった一度しかできないこの対面に、こんな態度されても困る気がした。
『最近あの日からはじめて泣いたわね』
「…………。」
『みんなに愛想振り撒くって心の内を明かさないで、一人で全部抱え込んで。そんなことして私が嬉しいとでも思ったの?』
「……………。」
『そんなに無愛想になったのも、あの日からよね。』
「………………。」
『…あの子達と、仲良くね。』