アレンは一度後ろに跳んでクロムから離れた。


(…ちょっとやばいかも)


剣が掠れてついた傷はアレンとクロムの両方にある。

が、アレンの方が多かった。


(…剣じゃ無理だ。片手だし…。)


今更ズキズキと痛みだした左腕をチラッと見た。

腫れ上がって変色し、力が入らない。


(…どうしよ)


…アレを使うか?


(どうせ後でイルのために使おうと思ってたんだし…、いいかな)


もしこのままやって自分が負けたとする。


そしたら、レイ達は?


ギルクとイルは怪我をしていて戦える状態じゃないし、この速さはレイでは対処できない。


だいたい、こんな事態を招いたのは自分の弱さが原因だ。


(…あいつらの為なら…。)


使っても、いい。



そう決めたアレンは、アレを使うことにした。




「………舐めてんのかい?」



クロムは戦い中に目を閉じたアレンを見て額に青筋を立てた。


アレンは静かに目を閉じたまま答えない。


「アレン、何してるのかしら…。」

レイはかなり不安そうにギルクに言う。

「…まぁアイツなりに考えがあるんだろ」

そう言いながらもさすがにギルクも少し不安になった。


(神経研ぎ澄まして気配で察知して戦う…とか?)


それは今ギルクが密かに修行している技。

そんなことを思いながら、ギルクはアレンをジッと観察した。



「…いい加減にしなよ!」

そう叫んだクロムはアレンに突っ込んだ。



その途端それを気配で察知したアレンは首筋に剣を握ったままの右手を当てた。