「無力なやつはいらない。足手まといになるだけだしね。」

ビーンはまた悔しげに唇を噛み締めると、姿を消した。




「…レイ、イルを治してて」

クロムが自分たちを見たのを視界の端で捉え、アレンはレイを二人の元に戻した。


「え?でももうあとちょっとしか治らないわよ?」

「いいから。ギリギリまでよろしく。後は俺が何とかするし。」

「何とかって…、アレン、あなた魔力あったの?」


レイのその問いには答えずに、アレンはクロムの前に跳んだ。


「そんな腕で俺に勝てるとでも?」

クロムは柔らかい笑みを浮かべたまま言う。

「あぁ、余裕」

その答えを聞いた瞬間、少年の表情が変わった。

恐ろしく残酷なもの。

赤い瞳は鋭く冷たくなった。


「…それが本性か」

アレンは剣を右手で握り締めて言った。

「まぁね」

そう言ったクロムは剣を構えてアレンに突っ込んだ。



繰り広げられる剣の攻防戦。


その速さはまさに神速。



「…見えねぇし…すげえな」

ギルクは感心して呟く。

だが。

「…アレン、やっぱ片手はキツそうだな」


微かにアレンが押されている。


「…大丈夫かしら」

心配そうに言ったレイを見て、ギルクは笑った。


「大丈夫だろ、あのアレンだぞ?」