「ギルク、イルを見てて」
レイは立ち上がった。
「え?!まだ傷治ってないし…、レイが戦うのか?妖術、強まったぞ?」
ギルクは驚いて聞いた。
「だってギルク、そんな怪我してたら無理よ。それにイルの怪我も、私の力で治せるのはあと少しだけ…。」
そう言ったレイはアレンを真っ直ぐに見た。
「…それに戦うんじゃないわ」
アレンが駆け出した。
その速さはレイがそう認識した途端に彼女を抑える程。
レイは仰向けに地面に押さえ付けられた。
アレンはその上に馬乗りになる。
「…アレン」
その碧の瞳を見つめる。
その瞳がレイの青い瞳を見た途端、微かに揺れた気がした。
「そんなことしても苦しいだけよ。やめて…。」
「…黙れ」
そう呟いたアレンは剣を後ろに引き上げた。
狙いを定める。
剣をすばやく真下に下ろした瞬間、レイが何かを呟いた。
「………アレン、もう自分を責めないで……。」
アレンの手が止まった。
剣先はレイの喉元の手前数ミリのところで停止する。
「……アレン」
レイはまたアレンを真っ直ぐに見上げた。
アレンの碧の瞳から、何かが零れた。
それはレイの頬に落ちる。
「……アレン」
「……うるさい、黙れ…。何もわからないくせに…。お前もあいつらみたいに……」
アレンが言う途中にレイは急に跳ね起きた。
いきなりのことに対処できず、アレンはよろけて後退する。
そのアレンに詰め寄ると、レイは濡れたアレンの右の頬を物凄い音を立てて平手で叩いた。


