部屋は冬でもないのに、極寒の地のように寒い。


氷点下の気温になった。


「…何だ!?」

ルナスはイルとメディンを見た。


見たところ魔法使いはあの二人だけ。

だが、あの二人も驚いている。



この変化にはアレンも気付いた。


(………ちっ)

心の中で舌打ちする。




部屋の温度が元に戻った。


「あれ?」

また暖かくなる。



みんなが不思議そうにする中、メディンだけはアレンがサッと首筋に手をやったのを見ていた。


そのアレンは、ルナスを一瞥すると剣へと手を伸ばす。


そして、ゆっくりとそれを抜いた。



「そっちがその気なら…」

「!!待て、こんなところで…」


ルナスはアレンの言葉に慌てる。


何しろ、アレンはこの街最強だったのだ。


ルナスでは手も足も出ないだろう。


「待たないしもう許さない」

「……お前ら、やれ!」



ルナスは残ったボディーガードに命令した。

ボディーガードは一斉にアレンに襲いかかる。

が、時計の針も動かない内に。



「…………?!」



アレンに倒されていた。

全部、峰打ちで。



「ギルク、情けないぞ。…そんなんに捕まってよ」

アレンはちらとギルクに目配せする。


するとギルクはにやっと笑い、ボディーガードを吹っ飛ばした。


「何だ、アレンが手出さないから駄目なんだと思ったぜ」

そう言いながらイルとレイとメディンを助け出す。



「…ルナス、お前は傷つけない。一応ユナルの父さんだし。だけど、まだこんな横暴するようだったら…」


アレンは剣先を腰を抜かした男に向けた。


「…その時は遠慮なく倒すから」


そう言ったアレンは、一人で部屋を出て行った。