レイはアレンの視線の先をジッと見た。
真っ暗な中で目が馴れたのか、微かに二つにくくったオレンジの髪が見える。
イルは座り込んでいた。
返事がないが、意識はあるようだ。
「…イル、怪我が…」
レイは駆け寄っていくと血の流れる腕を見た。
酷い怪我はそれだけだが、かすり傷が何個もある。
「イル、大丈夫?どうしたの?ギルクは……」
言葉の途中にレイは黙り込んだ。
イルの前に仰向けに横たわるものを見つけたのだ。
「…ギルク!」
ギルクは頭と腹から血を流して、目を閉じていた。
腹は魔物の爪で切られたもののようだが、頭は外傷は見当たらない。
「…あたしを…庇ったの。それで…お腹切られて…吹っ飛ばされて頭打って………」
四人の周りには大量の魔物が倒れている。
「じゃあ、これはイルがしたの?」
レイはすすり泣くイルを宥めながら優しく聞いた。
「…うん。ギルクが倒れたの見て、頭に血が昇っちゃったっていうか…。」
イルはレイを見上げると声をあげて泣き出した。
「大丈夫…大丈夫よ」
そう言いイルをなだめながら、レイは側に立っているアレンを見上げる。
「私が精霊を呼んで傷を癒すわ……、アレン?」
レイは不思議そうにアレンの名を呼んだ。
レイの視線の先のアレンは、ギルクを見ながら固まっていた。
「アレン!」
「…え?あ、ああ…、何」
ハッとレイの方に振り向いたアレンは慌ててそう訊く。
「イルを支えててちょうだい」
レイは腕の中でまだ泣いているイルを目で示した。
「…わかった」


