「…はめられたな」
宿を睨みながらアレンが言った言葉に、レイは驚いた。
「どういうこと?」
「あの老婆、外にいると危ないって言ったろ。泊まらないのかって。…たぶん老婆は、魔物とグルだ」
「どうしてそうなるの?」
まだわからないレイは青ざめながら聞いた。
するとアレンはスッと腕を伸ばす。
「そこにいるから」
―――――彼の指差す先には。
魔物の群れの中にいる、宿の老婆がいた。
魔物はそれを崇めている。
「たぶん…魔物使い、てとこか。」
魔物使い。
「それって…魔物を操って戦う…?本当にいるなんて思わなかったわ…」
魔物使いの存在に驚いているレイにアレンが優しく聞いた。
「レイ、戦えるか?」
「もちろんよ」
レイは力強く答える。
「じゃあ、そっち頼む」
アレンは自分の背後を首で示してそう言うと、すぐに群れに向かって走り出した。
目を疑うような物凄いスピードで魔物を倒していく。
まさに神速だ。
「私も」
そう呟いたレイは魔物の群れの半分を正面から見据えると、手を前に突き出した。
その手元に光が宿り、それが一点に集中していく。
「《氷柱の力を持つ極寒の精霊よ、我が力に従い、力を差しのべん…》」
光が赤色になった。
「《氷の精よ、降臨せよ!》」
カッ!!とレイの手から光が放たれる。
すると彼女の前に背中から透明な羽を生やしたペンギンが現れた。
……とてもかわいらしい。


