黒で統一された広い場所。


明かりが蝋燭だけだからか薄暗い、しかし豪華なその部屋に“それ”はいた。



〈…何事だ〉



地を這いずるような低く恐ろしい声が響く。



やはり黒い椅子に座る“それ”自身も真っ黒だ。



「はい、あいつから伝言でございます」



“それ”の前で跪き、頭を下げている少年は柔らかい声でそう報告する。


薄暗いせいかその姿はよく見えない。




「どうやら予言のことを知ったようで。」



〈ほう。〉



“それ”は興味ありげに呟いた。


跪いていた少年は顔を上げる。

その拍子に青白い炎のついた蝋燭がその顔を照らした。



赤い瞳に灰色の髪。整った顔立ち。



「早めに殺っときますか?」


少年は優しい印象の容姿からはとても想像できないような、恐ろしい発言をした。



その問いに黒一色の“それ”はしばらく考えた後に呟く。



〈…そうだな。〉


「俺がしましょうか?」


少年は口の端を不気味に吊り上げ笑いながら訊いた。



さっきまでの優しい印象はもうすでにない。



〈そうしろ。あとあいつもだ…。いいことを思い付いた。〉




“それ”と手まねきされた少年は二人で何やら話し込む。




やがて。





「…わかりました。仰せのままに。」



少年は立ち上がって柔らかく微笑みそう言うと一つ礼をし、その場から立ち去った。






〈ははは…楽しみにしているぞ…〉




真っ黒な室内に、恐ろしい笑い声が響く。