「アレン?」

ギルクの手を離す。



アレンはうつ向き、頭を両手で抱えていた。



「…やだ…やだ…やめて…やめろ…」


「アレン!?」

レイがアレンの肩に手を置き、呼び掛ける。



おれを…、‘僕’を見る、みんなのあの目…………。



目の前の綺麗な顔が歪んで見える。




「…やめろ…そんな…顔で……、そんな…目…で、見るな…。」


レイの手を振りほどく。



「おれは…邪魔なんだ…!みんな…おれを……。…ぼく…は…。」


アレンは爪が食い込むくらい自分の手をぎゅっと握り締めた。




「…もう…ほっといて…よ…!!嫌だよ…お母さん…」


不意に、温かい何かに包まれた。


優しい、ぬくもり…。





「……………。」



アレンは自分を抱き締める、綺麗な女の人を見つめた。



「大丈夫よ…アレン…」


レイはアレンを抱き締めながら、ずっとそう繰り返した。




(お母さんみたいだ…。)




温かい。


優しい。


安心、できる。



「……………………。」




そのままアレンは眠ってしまった。




「…イル…。俺、アレンに何か悪いことしたの?」

ギルクが涙目でイルに聞く。



「ううん、ギルクは悪くないわよ。大丈夫だから」

「本当に?」


「うん」




レイはアレンの頭を撫でた。



すやすや眠るアレン。


あんなに取り乱して、あんなに動揺して。

8歳の小さな子が、ほっといて、と言ったのだ。



レイは信じられなかった。


それだけ辛いことを言っていたのに、涙は一つも落とさない。




笑い方も泣き方も、忘れたみたいだった。





「ギルク!」

イルの叫び声でハッと我に返る。

ギルクが目を瞑り、光っていた。


それはアレンも同じで。


「戻るみたいだな」

ロンが言った。