レイはアレンに駆け寄り、腰を落として視線を合わせた。
「アレン、手出してみて」
「なぁに?」
アレンの小さな手のひらにチョコレートを置くと、彼は不思議そうな顔をした。
「くれるの?」
「うん。好きでしょう?」
「うん。どうしてわかったの?」
「ふふ、どうしてかしらね。」
「…ありがとう」
子供アレンはうつ向きながら呟いた。
(…さっきから笑わないなぁ…。やっぱり不安なのかしら…。)
レイは少し困った顔をする。
が、アレンはチョコレートの包み紙を取るのに夢中で気付かない。
そこに子供ギルクが来た。
飴を舐めている。
一人だけ自分と年が近いアレンに興味を持ったらしい。
「なぁなぁ、君さぁ、何歳?名前なんて言うんだ?」
「アレンだよ。8歳。」
アレンは座っているので、立っているギルクを見上げなければならなかった。
自然と上目遣いになる。
それを見たレイは和んでいた。
「8歳かぁ!!俺は9歳なんだ。ギルクって言うんだ!よろしくなぁ」
ギルクは小さな手を差し出し、ニカッと笑った。
「うん」
アレンも手を取ったが、笑わない。
「アレン君、やっぱり不安かい?」
ロンが聞いた。
「なんで?」
その質問にアレンは首をかしげる。
「いや、笑ってないから。怖くない?」
ロンが優しく聞いた。
「怖くないよ。みんな優しいもん。本当に…。」
そこで子供アレンははじめて笑った。
他人から見たらとても可愛い笑顔だろう。
だけどそれはレイ達にはぎこちない、まるで笑い方を忘れたかのような笑顔に見えた。
ロンは気付かなかったが、幼いため鋭いのか、ギルクはすぐに気が付いた。


